「省エネ住宅」について分かりやすく解説! 【初級編】

はじめに

「省エネ住宅」についてご存知でしょうか?

近年、「2050年カーボンニュートラル」や「2030年温室効果ガス46%削減」等の宣言を受けて、「省エネ」に対する意識が高まってきています。
建築業界でも、その流れにのり、「省エネ住宅」に注目が集まっています。

以前、省エネ住宅の基準やメリット、省エネ住宅と同様の場面で耳にすることが多い「ZEH」や「性能向上計画認定住宅」等の住宅との違いについてご紹介しました。しかし、外皮基準について等、建築業界以外の方には少し分かりにくい内容があったかもしれません。
今回は、建築に詳しくない方でも理解を深められるよう、さらに分かりやすく「省エネ住宅」についてご紹介します!

省エネ住宅とは

省エネ住宅とは「省エネルギー住宅」の略で、省エネ性能の高い住宅のことを指します。
日本の家庭ではエネルギー消費の約30%を占めているのが冷暖房といわれており、この暖冷房のエネルギー消費を抑えることのできる住宅が「省エネ住宅」と言えます。

では‘暖冷房のエネルギー消費を抑えることのできる住宅’はなにが優れているのでしょうか。
暖房を利用する冬には、室内の暖かい空気が外部に逃げないよう「断熱性能」が優れている必要があります。
また、冷房を利用する夏には、外部からの熱が室内に侵入しないよう「日射遮蔽性能」が優れている必要があります。
さらに、その2つの性能が充分に発揮できるよう「気密性能」も大切になります。

断熱性能

断熱性能とは、屋内と屋外の熱の移動を遮断する能力のことです。
住宅は壁や床、屋根、窓などを通して熱が移動します。冬に暖房をつけていると室内の温度が高くなり、熱は高いほうから低いほうへ移動するため、温度の低い外部に逃げようとします。この移動を減らすことにより、少ないエネルギーで効率よく暖房を行うことができます。

日射遮蔽性能

日射遮蔽性能とは日射を屋内に入れないようにする能力のことです。
冬の寒さ対策で断熱性を上げると夏の暑さも室内から逃げにくくなります。夏に室内の温度が上がる要因で最も大きいのが、外部からの日射熱です。暑さの原因となる日射を室内に入れないようにすることで、室内の温度の上昇を抑え、冷房に必要なエネルギーを削減することができます。

気密性能

気密性能とは住宅の隙間を減らし、屋内と屋外の空気の移動を分断する能力のことです。
家は、壁や天井・窓などの沢山の材料を使って建てるため、隙間風を感じるほどではなくても、どうしても隙間ができてしまいます。冬はその隙間から外の冷たい空気が入り、家の中の暖めた空気が逃げ、夏は逆に暑い空気が入り、冷やした空気が逃げてしまいます。極力この隙間を無くすことで、少ないエネルギーで冷暖房の効果が効きやすくなります。

省エネ住宅の基準

上記でご紹介した3つの性能が高いと省エネ性能の高い住宅になります。
ただ、一概に性能が高いと言っても比較が難しいため、「省エネ住宅」ではそれぞれの数値の基準が定められています。
断熱性能は「外皮平均熱貫流率」(UA値)、日射遮蔽性能は「冷房期の平均日射熱取得率」(ηAC値)で表します。

さらにもう一つの基準が「一次エネルギー基準」です。「一次エネルギー基準」はこれまでご紹介した住宅の性能基準とは異なり、設備の性能基準を表したものです。

一次エネルギー基準

一次エネルギー基準は設備のエネルギー消費量の基準です。
「一次エネルギー」というのは太陽光や風力等の自然から得られるエネルギーのことです。私たちが生活するうえでは、一次エネルギーを変換・加工した、電気や都市ガス等の「二次エネルギー」を多く使用します。二次エネルギーの数値を一次エネルギーに変換し、冷暖房・換気・照明・給湯設備のエネルギー消費量や、太陽光発電設備等エネルギー利用設備のエネルギー発電量が基準数値以下であることで「省エネ住宅」となります。

住まい方の工夫

ここまで、省エネ住宅の特徴や基準についてご紹介しました。建築時に断熱性能等を工夫しないと「省エネ住宅」にはならないと感じた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、住まい方の工夫で「省エネ住宅」に近づけることができるのです!

断熱対策

断熱の弱点と言われるのが「開口部」です。いわゆる窓や玄関のことで、特に窓は熱の出入りが大きく、冬の暖房時に室内から逃げ出す熱の約6割、夏の冷房時に室外から侵入する熱の約7割は窓等と言われています。

窓は‘サッシ’と‘ガラス’の2つの素材でできています。
サッシは樹脂や木を使うと断熱性能がUPします。
ガラスは二重ガラスや三重ガラスにすることで断熱性能をUPすることができます。また、簡単なリフォームでは室内側に内窓を設置したり、窓に断熱シートを貼るだけでも効果があります。

遮熱対策

夏の太陽高度は高いため、南側の窓に庇やオーニングテントを設置することで日射熱の侵入を防ぐことができます。
後付けできるオーニングテント等もありますが、設置が難しい場合はブラインドを設置したり、植栽を置くことでも対策が可能です。
ブラインドを設置する場合は窓の外に取り付けることで、内側に取り付けるよりも3倍近くの効果があるとされています。内側に設置すると日射熱が居室側に入ってから遮断することになりますが、外側に取り付けることで、屋外で遮断することが可能になるためです。
また、植栽を置く場合は落葉樹を選択することで、夏の日差しは遮りつつも、冬の日差しは取り込むことができます。

設備対策

家庭でエネルギーの使用量が多いのが、エアコン等の空調設備、照明、冷蔵庫や洗濯機、テレビ等です。
古い設備機器はエネルギーを多く使用するものも多く、省エネ型製品への買い替えでエネルギーを大幅に減らせることもあります。
また、照明やテレビは使用していない時には消す、使用していない電気製品のプラグはコンセントから抜く等でも省エネ対策になります。

まとめ

省エネ対策は温室効果ガス削減のためと言われていますが、「省エネ住宅」は生活する人にとっても様々なメリットがあります。
例えば、断熱性能を高めることで、室内の上下の温度差や居室ごとの温度差も少なくなり、家全体の快適性がUPします。また、エネルギーの使用量を削減することは光熱費を削減することにもなります。

建築物省エネ法の改正により、2025年の4月からは原則全ての建築に省エネ基準適合が義務付けられます。これから住宅購入や建築を考えている方はもちろん、既に建築済みの方も、ぜひ「省エネ住宅」をご検討いただければと思います。