省エネ性能を確認できる「仕様基準」について分かりやすく解説!

はじめに

「仕様基準」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。 建築物省エネ法で定められている「省エネ基準」に適合しているかを、計算によらず確認することができる基準のことです。 2022年11月に見直され、使い勝手がさらに向上しています。 今回はこの「仕様基準」について分かりやすくご紹介します。

省エネ基準と仕様基準

省エネ基準とは、建築物省エネ法で定められた「建築物エネルギー消費性能基準」のことです。屋根・外壁・窓などの断熱の性能を表す「外皮基準」、住宅で使う設備の省エネ性能を表す「一次エネルギー基準」の2つの基準でできています。この基準を満たしている「エネルギー消費の少ない住宅」が「省エネルギー住宅」となります。

省エネ住宅について詳しくはこちら

「省エネ基準」の適合を確認するには「性能基準」「仕様基準」の2つの方法があります。「性能基準」とは「外皮性能」と「一次エネルギー消費性能」の計算を行い、基準適合を確認する方法です。それに対し、「仕様基準」は計算を行わず、確認する方法です。

「建築物省エネ法」の改正に伴い、2025年に全ての新築住宅に省エネ基準への適合が義務付けられる予定です。しかし、基準を達成しているか全物件で「性能基準」の計算を行うのは、大変な負担になります。
そこで見直されたのが、計算によらず「省エネ基準」の適合を確認できる「仕様基準」です。新たな「仕様基準」を用いることで、住宅の省エネ性能をさらに簡単に評価することができるようになりました。

仕様基準の見直し内容

2025年の省エネ基準への適合義務化を見据え、2022年11月に仕様基準が見直されました。内容は大きく3つです。

①建て方別の外皮仕様基準の設定

従来の外皮の仕様基準は、木造・鉄骨造は戸建住宅、鉄筋コンクリート(RC)造等は共同住宅等を想定して、外皮仕様基準が定められていました。
今回の見直しでは、RC造の戸建住宅や木造の共同住宅に対応した新たな基準が新設され、より詳細な検討が可能になりました。

②開口部比率の廃止

従来の仕様基準は「熱貫流率」と「日射遮蔽対策の基準」を確認するため「開口部比率」を計算する必要がありました。

2025年の省エネ基準適合義務化を見据え、申請側・審査側の負担軽減を図るため、開口部比率の区分が廃止されました。

③誘導仕様基準の新設

誘導基準とはZEH基準の水準の省エネ性能のことです。従来の仕様基準は「省エネ基準」のみが制定されており、「誘導基準」を達成しているかの確認は性能基準で確認する方法しかありませんでした。
政府は2025年の省エネ基準適合義務化に加え、2030年には義務基準をZEHレベルに引き上げる方針を掲げています。この方針を受け、計算によらず誘導基準の適合が確認できる「誘導仕様基準」が新設されたのです。

仕様基準を活用するメリット

「省エネ基準」「誘導基準」への適合を簡単に確認!

仕様基準・誘導基準ガイドブックが作成されており、チェックリストを用いて簡単に確認する方法が紹介されています。チェックリストは「断熱材」「開口部」「設備機器」の仕様をチェックすることで省エネ基準への適否を確認することができます。建築主への説明資料としても活用することができます。

ガイドブック&チェックリスト(国土交通省HP)はこちら

建築確認申請において「省エネ適合性判定」が不要!

現在、省エネ基準適合義務の対象は中・大規模の非住宅建築となっていますが、建築物省エネ法改正により対象が拡大し、2025年4月からは原則すべての建築に省エネ基準への適合が義務付けられる予定です。しかし、仕様基準を用いることで、省エネ適合性判定が不要になるのです。申請費用もかからず、着工後に床面積や開口部面積の変更が出た場合でも、基準値を満たす内容であれば「軽微な変更」として対応することが可能です。

省エネ法改正についてはこちら

各種制度・申請にも活用可能!

省エネ基準への適合確認だけでなく、「住宅性能評価」「BELS」「長期優良住宅」「低炭素住宅」「フラット35」「住宅ローン減税」等の申請図書の一部としても活用することが可能です。

住宅性能評価についてはこちら

長期優良住宅についてはこちら

低炭素住宅についてはこちら

フラット35についてはこちら

BELSについてはこちら

一次エネルギー消費性能のみ計算で求めることも可能!

チェックリストは省エネ基準への適否確認を容易にするため、設備機器が限られていますが、「断熱材」と「開口部」の適合をチェックリストで確認後、「設備機器」をエネルギー消費性能計算プログラムで確認することも可能です。

エネルギー消費性能計算プログラムはこちら

まとめ

省エネ基準への適否を確認できる「仕様基準」についてご紹介しました。

ご紹介した内容にもあるように、2025年4月からは原則すべての建築に省エネ基準への適合が義務付けられる予定です。すべての物件で「外皮性能」と「一次エネルギー消費性能」の計算を行うのは審査側だけでなく、申請側にも大きな負担となります。

住宅供給に携わる方は、ぜひ今回ご紹介した「仕様基準」を活用し、業務の効率化や負担軽減に役立てていただければと思います。

国土交通省チラシはこちら