省エネ法改正について 背景や内容を分かりやすく解説!

「カーボンニュートラル」と「建築」

2020年に政府は地球温暖化や、近年の異常気象の問題解決に向けて、2050年までに温室効果ガス実質ゼロの「カーボンニュートラル」を目指すことを宣言しました。実質ゼロというのは二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量から、植林、森林管理などによる吸収量を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味しています。

さらに、2021年には、2050年のカーボンニュートラルを見据え、「2030年温室効果ガス46%削減、さらに50%の高みを目指す」ことを宣言しました。

「カーボンニュートラル」と「建築」にどのような関係があるのか、疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。 実は建築物分野はエネルギー消費の約3割を占めており、2050年カーボンニュートラルに向けて、建築物分野の再エネ・省エネ対策強化は必要不可欠なのです。

それを証するように、同年

2030年度以降新築される住宅について、ZEH基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指す

2030年において新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備が設置されることを目指す

という政府目標が掲げられました。

建築物の省エネルギー性能については法律で基準が定められていますが、この目標にあわせてその内容も改正されることになりました。 改正される「建築物省エネ法」について詳しくご紹介します。

「省エネ法」と「建築物省エネ法」

省エネ法とは1979年に制定された「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」のことです。
元々は石油危機を契機として、工場、輸送機関等において、石油や石炭、天然ガスなどの限りある資源がなくならないように、エネルギーを効率良く使うことを目的に制定されました。

その後、建築物に関する規定を詳細にして作られたのが「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」通称「建築物省エネ法」です。建築物省エネ法は、建築物におけるエネルギーの消費量が著しく増加していることに鑑み、建築物のエネルギー消費性能の向上を図るため2015年に交付されました。

内容

従来の「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」で措置されていた300m2以上の建築物の新築等の「省エネ措置の届出」や、住宅事業建築主が新築する一戸建て住宅に対する「住宅トップランナー制度」等の措置の移行

2000㎡以上の大規模非住宅建築物の省エネ基準適合義務

エネルギー消費性能の表示制度

省エネ性能向上計画の認定、容積率特例

建築業界で「省エネ法」というと、この建築物省エネ法を指すことが多いでしょう。

省エネ法改正内容について

上記でご説明した建築物省エネ法では現在、大規模(2000m以上)と中規模の、非住宅で適合義務、住宅で届出義務、小規模の非住宅と住宅は説明義務と定められています。

しかし、2022年6月に公布された『脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律』により、原則全ての建築物が省エネ基準への適合が義務付けられます。
(下記、表参照)

また、その他に

◇省エネルギーの徹底に加え、再生可能エネルギー利用設備の設置促進

◇義務基準である省エネ基準を上回る、建築物の省エネ性能の一層の向上を図る(建築主の努力義務)

◇建築物の省エネ性能の向上について建築主に説明する(建築士の努力義務)

◇住宅トップランナー制度の対象に分譲マンションを追加

◇販売・賃貸が行われる建築物のエネルギー消費性能の表示推進

◇建築物再生可能エネルギー利用促進区域制度の導入

等について改正されます。

まとめ

2050年カーボンニュートラルに向けて、改正される建築物省エネ法についてご紹介しました。地球温暖化や気象災害が身近になった今、建築物分野での省エネ・再エネ対策の強化が必要不可欠です。建築に携わる私たち一人一ひとりが知識を身に着け、行動していくことが大切ですね。

全ての新築住宅・非住宅への省エネ基準適合は2025年の4月に施工される予定で、施工日以降に工事に着手する建築物が対象になります。 建築確認申請等手続きを施工日前に進める建築もでてくるかと思います。 また、省エネ基準への適合性審査は建築確認手続きの中で行われるため、省エネ基準へ適合しない場合、確認済証や検査済証が発行されず、着工・使用開始が遅延する恐れもあります。 今回ご紹介した改正内容について頭の隅に入れておいていただき、住宅建築や購入の際の参考にしてみてください。