省エネ住宅のメリット

はじめに

近年、「2050年カーボンニュートラル」や「2030年温室効果ガス46%削減」等の宣言を受けて、建築業界でも、「省エネ住宅」に注目が集まっています。
弊社ホームページ内でも何度か「省エネ」や「省エネ住宅」についてご紹介してきました。
温室効果ガス削減のためと言われていますが、実は「省エネ住宅」は生活する人にとっても様々なメリットがあります。

今回は「省エネ住宅」に住むことのメリットについて詳しくご紹介します。
「省エネ住宅」の基準については過去の投稿で詳しくご紹介していますので、今回の内容とあわせてご覧いただければと思います。

参考記事: 省エネ住宅とは?他の住宅との違いも分かりやすく解説!

*簡単におさらい*

省エネ住宅とは「省エネルギー住宅」の略で、国が定める「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(通称「建築物省エネ法」)の基準を満たしている「エネルギー消費の少ない住宅」のことです。
屋根・外壁・窓などの断熱の性能を表す「外皮基準」
住宅で使う設備の省エネ性能を表す「一次エネルギー基準」の2つの基準に適合することで省エネ住宅となります。

省エネ住宅のメリット

◇快適に暮らせる

「省エネ住宅」がここまで注目されているのは快適に暮らせると言われているからこそでしょう。

築年数の古い住宅は断熱性能が低いものが多く、断熱性能が低い住宅は床・壁・天井など外皮の表面温度が屋外気温に近くなります。
人の体感温度は、簡易的には「室温」と「部屋の表面温度」の平均となるため、床や壁の表面温度が低いと、室温をあげても体感温度は低くなってしまうのです。

省エネ住宅の基準のひとつ「外皮基準」を達成することは断熱性能が高いことを意味します。
断熱性能が高いと、冬の寒い日でも床や壁・天井の表面温度を室温に近づけることが可能です。
表面温度が上がると体感温度も上がるため快適に感じるのです。

また、断熱性能を高めると、室内の上下の温度差や居室ごとの温度差も少なくすることができます。
「暖房を効かせた暖かい部屋なのに、足元が寒い」や「廊下に出ると寒い」といった問題を解決し、快適に暮らすことができるのです。

省エネ住宅消費者普及ワーキンググループ著 「快適・安心なすまい なるほど省エネ住宅」より)

◇光熱費を削減できる

目に見えて分かりやすいメリットが光熱費の違いです。

断熱性能が高いことで冷暖房を効率良く使用可能であることに加え、省エネ性能の高い設備を導入することでエネルギーの使用量を削減することも可能なためです。
国土交通省が公開したデータによると、東京23区の住宅ではこれまでと比べ、「省エネ住宅」は約6万円「ZEH住宅」は約12万円年間の光熱費が削減できるとしています。

省エネ住宅消費者普及ワーキンググループ著 「快適・安心なすまい なるほど省エネ住宅」より)

◇健康につながる

断熱性能が高いと居室ごとの温度差を減らし、「快適に暮らせる」とご紹介しましたが、さらに居住者の健康を守ることにもつながります。

① ヒートショックのリスク軽減

急激な温度変化は、血圧が上下し心臓や脳に大きな負担をかけます。これを「ヒートショック」と言います。

冬に暖房で暖めた部屋から寒い脱衣所に行き、熱いお風呂に入る等の行動をすると、短時間で温度が大きく変化するため、ヒートショックのリスクが高くなります。
年間の入浴中の急死者数は、交通事故による死者数の4倍以上とも言われており、そのほとんどが冬、65歳以上の高齢者に集中しています。

また、入浴事故のリスクは42℃以上の‘熱め入浴’に多いとされていますが、室温が18℃未満の住宅ではこの‘熱め入浴’が1.8倍に増加するというデータもあります。
断熱性能が高い「省エネ住宅」は、家の中全体の空気が均一に温まりやすく、室ごとの温度差が少ないため、ヒートショックのリスクを軽減することができます。

一般財団法人ベターリビング発行 「健康に暮らすためのあたたか住まいガイド」より)

血圧の低下

室温の低い家に住む人ほど、起床時に血圧が高くなる傾向があり、その影響は高齢になるほど大きいとされています。

高血圧そのものには自覚症状などはありませんが、血管が傷ついたり、動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳卒中といった重疾患を招くリスクが上がると言われています。
また、室温が同じであっても、床付近が15℃未満の住宅に住む人は、15℃以上の住宅に住む人と比べて、高血圧になりやすいというデータもあります。

「省エネ住宅」は、室内の温度を快適に保ち、上下の温度差も少なくすることができるため、高血圧になるリスクも軽減することができます。

一般社団法人日本サステナブル建築協会 「省エネ住宅」と「健康」の関係をご存知ですか?」より)

喘息やアレルギーの予防

断熱性・気密性の低い住宅は、湿度の高い室内の空気が冷たい窓や壁に触れることで、結露がおきやすくなります。

結露はカビの繁殖につながり、カビを好物とするダニの発生も助長します。
断熱性・気密性の高い「省エネ住宅」は、喘息やアレルギーの原因となるカビ・ダニの発生を防ぐことができます。

省エネ住宅消費者普及ワーキンググループ著 「快適・安心なすまい なるほど省エネ住宅」より)

まとめ

「省エネ住宅」のメリットについてご理解いただけたでしょうか。

「光熱費の削減」と比べると、快適性や健康は個人差もあり判断が難しい内容に思われますが、省エネ住宅の実例が増えていることで、信頼できるデータで証明されているものが多くあります。
また、上記メリットでは挙げていませんが、太陽光や蓄電池を採用した場合には、停電時にも電気を使った生活をすることができます。

「省エネ住宅」というと、達成するのが難しい・費用がかかる等のイメージがあるかもしれません。
しかし、2025年には省エネ法改正により、新築されるすべての住宅に省エネ基準適合が義務付けられます。

参考記事:省エネ法改正の内容とは?

また、2030年にはさらに高性能のZEHレベルを義務基準にする方針も掲げられており、今後さらに住宅の省エネ性能が求められることを考えると、今から改正内容に適合した「省エネ住宅」を検討したいところです。

参考記事:省エネ対策の動向・ロードマップ

ご紹介した「省エネ住宅」のメリットについて、頭の隅に入れておいていただき、住宅建築や購入の際にはぜひ「省エネ住宅」をご検討ください。
→国土交通省HPはこちら