「建築物の省エネ表示制度」について詳しく解説!
はじめに
2022年6月に改正建築物省エネ法が公布されました。
2025年4月からは原則全ての建築物に「省エネ基準への適合義務」が適応されることや、それに伴う4号特例制度の見直しが注目されていますが、他にも様々な規制が改正されるのをご存知でしょうか。
今回は、改正内容のひとつ、「建築物の省エネ表示制度」について詳しくご紹介していきます。
「建築物の省エネ表示制度」とは
「建築物の省エネ表示制度」とは、建築物の販売・賃貸事業者が広告等に建築物の省エネ性能を表示する制度です。
2020年、政府は「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言し、建築物分野の再エネ・省エネ対策強化を急速に進めています。2025年4月からは原則全ての建築物に「省エネ基準への適合義務」が適応される予定ですが、それに先立ち、消費者の省エネ性能への関心を高めるための改正が順次施行されています。今回ご紹介する「建築物の省エネ表示制度」もそのうちのひとつです。
省エネ表示制度により、購入・賃借する消費者が、建築物の「省エネ性能」の把握や比較をしやすくなり、省エネ性能が高い住宅・建築物の供給が促進されることが期待できます。
詳細
2024年4月から、建築物の販売・賃貸事業者は新築建築物の販売・賃貸の広告等において、既定のラベルを用いて省エネ性能を表示することが努力義務化されます。努力義務の対象は2024 年 4月1日以降に建築確認申請を行う新築建築物です。再販売や再賃貸の際にも表示できるよう、ラベルや評価書といった発行物は保管しておく必要があります。
発行物
省エネ性能表示制度の発行物は2種類で、「省エネ性能ラベル」「エネルギー消費性能の評価書」の2つをセットで発行します。
発行方法も「自己評価」と「第三者評価BELS」の二種類あり、
「自己評価」の場合は販売・賃貸事業者が自ら、国が指定する WEB プログラム、もしくは仕様基準に沿って、評価を行います。
「第三者評価BELS」の場合、販売・賃貸事業者が第三者の評価機関に申請し、評価機関が評価します。
後者ではラベルや評価書にBELS マークを表示することが可能です。
自己評価「WEBプログラム」はこちら(一般社団法人住宅性能評価・表示協会HP)
省エネ性能ラベル
発行物のひとつ「省エネ性能ラベル」はポータルサイトやチラシ等の広告に使用するラベル画像です。
建築物の種類によって使用するラベルが異なりますが、ここでは住宅の内容をご紹介します。
表示される項目は9つあります。
・エネルギー消費性能
国が定める省エネ基準からどの程度消費エネルギーを削減できているかを見る指標(BEI)を、星の数1つ(削減率0%未満)から6つ(削減率50%以上)で示します。
BEIは「設計一次エネルギー消費量」を「基準一次エネルギー消費量」で割って求めます。
冷暖房・換気・照明・給湯設備のエネルギー消費量や、太陽光発電設備等エネルギー利用設備のエネルギー発電量が基準数値よりもどれだけ低くなるかで評価が決まります。
再エネ設備の無い住宅は「30% 以上の削減率」を上限とした0~4の5段階評価です。再エネ設備がある住宅は「50% 以上の削減率」を上限とした0~6の7段階評価になります。
・断熱性能
建物からの熱の逃げにくさを表す「外皮平均熱貫流率(UA値)」と、建物への日射熱の入りやすさを表す「冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値)」の2つの点から建物の断熱性能を見る指標で、7段階で評価します。
「外皮平均熱貫流率(UA値)」と「冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値)」はどちらも全国を8つの区域に分けて基準数値が定められています。ラベルに表示する7段階の評価は、その地域区分に応じた等級で評価し、いずれか低いほうの等級を表示します。
・目安光熱費
住宅の省エネ性能に基づき算出された電気・ガス等の年間消費量に、全国統一の燃料等の単価を掛け合わせて算出した 1年間の光熱費の目安です。任意項目のため記載がない場合もありますが、消費者にとってはもっとも分かりやすく、比較もしやすくなるのではないでしょうか。
・評価方法
省エネ性能の評価が販売・賃貸事業者による自己評価か、評価機関による第三者評価かを示します。
・建物名称
・再エネ設備有無
太陽光発電等の再生可能エネルギーを利用した発電設備の設置有無を表記します。
・ZEH水準
エネルギー消費性能が★3つ、断熱性能が5以上で達成のマークを表記します。
・ネット・ゼロ・エネルギー
年間のエネルギー収支がゼロ以下の場合に達成のマークを表記します。第三者評価(BELS)の場合のみ適用されます。
・評価日
評価された省エネ性能がいつ時点のものかを示します。
エネルギー消費性能の評価書
発行物のひとつ「エネルギー消費性能の評価書」は建築物の概要と省エネ性能評価を記した保管用の証明書です。建築物の種類・評価方法によって使用するラベルが異なりますが、ここでは住宅の自己評価の内容をご紹介します。
表示する項目は「省エネ性能ラベル」の内容をより詳しくした内容で、項目は8つです。
・建物の種類
・評価方法
・物件概要
ラベルに表示する建物名称以外に、所在地や構造、延べ面積等を表示します。再エネ設備の有無・容量もこの項目に表示します。
・評価概要
ラベルに表示する評価日の他、評価手法や評価者等を表示します。
・エネルギー消費性能
ラベルより詳しく、「再エネ無しの削減率」「自家消費分の再エネを含む削減率」「自家消費分と売電分の再エネを含む削減率」の3つの評価を表示します。
・断熱性能
・目安光熱費
・総合判定
消費エネルギー性能と断熱性能の評価をもとに、省エネ基準と誘導基準(ZEH水準)が達成できているかを表示します。
まとめ
2024年4月からスタートする「建築物の省エネ表示制度」についてご紹介しました。
2025年からは原則全ての建築が省エネ適合義務の対象になります。
省エネ表示制度は努力義務ではありますが、表示の有無は消費者にとってひとつの判断基準になりそうですね。
今回ご紹介した改正内容について頭の隅に入れておいていただき、住宅建築や購入の際の参考にしてみてください。