【性能表示制度】評価項目「維持管理」について
はじめに
「住宅性能表示制度」についてご存知でしょうか。
消費者が良質な住宅を安心して取得できるように、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づいて、第三者機関が住宅の性能について評価し、その「性能評価」を表示するしくみのことです。
評価する項目は大きく10の区分が設けられています。詳しくはこちら
4回目の今回は「維持管理・更新への配慮」に関する内容についてご紹介します。
前回までの内容
公式Instagramでも分かりやすくまとめていますのでぜひご覧ください!
概要
前回お伝えした「劣化の軽減」では、建物の劣化を軽減するために、構造躯体に使用される材料について評価していました。
しかし、建物は構造躯体等の耐用期間が長い部分だけでなく、配管や内外装などの耐用期間が短い部分も存在します。
耐用期間が短い部分に関しては、劣化を軽減するよりも、日常の点検や補修などの維持管理が容易にできるかどうかが重要になります。
「維持管理・更新への配慮」に関することでは、「給排水管・給湯管及びガス管の日常の維持管理のしやすさ」について評価しています。
評価項目と等級
4ー1 維持管理対策等級(専用配管)
専用部分の給排水管、給湯管及びガス管の維持管理を容易とするために必要な対策の程度について、以下のイ~ホの5つの基準で評価します。
イ. 配管方法の基準
配管(排水管・給水管・給湯管・ガス管)をコンクリート内に埋め込むと、配管の維持管理が困難になるため、基礎の立ち上り部分等の貫通部を除き、配管がコンクリート内に埋め込まれないことを確認します。
ロ. 地中埋設管の基準
地中埋設管(排水管・給水管・給湯管・ガス管)の上にコンクリートを打設していると、その部分の維持管理が困難となるため、地中埋設管上にコンクリートを打設しないことを確認します。(住宅の構造躯体に影響なく土間を撤去できる場合や、寒冷地で凍害防止のため配管埋め込みの条例等がある場合は適用されません。)
ハ. 排水管の基準
ゴミがたまったり、清掃用具が突っかかったりしないよう、排水管にたわみや内側の凹凸がないかを確認します。
ニ. 排水管の清掃のための措置の基準
排水管の点検及び清掃が、構造躯体と仕上げに影響無く行えるよう、掃除口や清掃できるトラップが設置されているかを確認します。(1階の便所の排水管で、隣接する排水桝に接続するものは審査から除外されます。)
ホ. 配管点検口の設置の基準
配管の点検等が、躯体と仕上げに影響を及ぼさずに行えるかを確認します。設備機器と配管の接合部や、バルブ、ヘッダーや掃除口が仕上げ材等で隠れている場合には点検口等の開口を設ける必要があります。
表示方法:等級1~3
「イ」~「ハ」3つを対策しているものが等級2、「イ」~「ホ」5つ全てを対策しているものが等級3となります。等級2に満たないものが等級1となり、基準はありません。
4ー2 維持管理対策等級(共用配管):共同住宅のみ
共用部分の給排水管、給湯管及びガス管の維持管理を容易とするために必要な対策の程度について、以下のイ~ニの4つの基準で評価します。
イ. 配管方法の基準
配管(排水管・給水管・給湯管・ガス管)をコンクリート内に埋め込むと、配管の維持管理が困難になるため、貫通部を除き、配管がコンクリート内に埋め込まれないことを確認します。
ロ. 配管点検口の設置の基準
配管の点検や清掃が、躯体と仕上げに影響を及ぼさずに行えるよう、適当な位置に点検口や掃除口が計画されているかを確認します。
ハ. 補修を行うための措置の基準
補修のための開口や人通孔が計画されているかを確認します。
ニ. 共用配管の設置位置の基準
専用住戸に入らずに点検や清掃等を行えるよう、共用配管が専用住戸外(共用部やバルコニー等)に計画されているかを確認します。
表示方法:等級1~3
「イ」「ロ」の2つを対策しているものが等級2、「イ」~「ニ」4つ全てを対策しているものが等級3となります。等級2に満たないものが等級1となり、基準はありません。
4ー3 更新対策(共用排水管):共同住宅のみ
共用部分の共用排水管の更新工事を容易とするために必要な対策の程度について、以下のイ~ハの3つの基準で評価します。
イ. 配管方法の基準
排水管をコンクリート内に埋め込むと更新が困難になるため、貫通部を除き、配管がコンクリート内に埋め込まれないことを確認します。
ロ. 共用排水管の設置位置の基準
専用住戸に入らずに排水管の更新を行えるよう、共用排水管が専用住戸外(共用部やバルコニー等)に計画されているかを確認します。
ハ. 更新しやすさの基準
更新時の工事を極力軽減するため、新しい排水管のスペースがあらかじめ計画されているか等を確認します。
表示方法:等級1~3・共用排水立管の位置の記入
「イ」「ロ」の2つを対策しているものが等級2、「イ」~「ハ」3つ全てを対策しているものが等級3となります。等級2に満たないものが等級1となり、基準はありません。
4ー4 更新対策(住戸専用部):共同住宅・長屋のみ
間取り変更などの自由度を高めるために重要な、躯体天井高さについて評価します。
表示方法:記述
まとめ
「性能評価」の「維持管理・更新への配慮」に関する内容についてご紹介しました。
等級1には基準がないため、必須項目となっています。
新築時はなかなか意識できない内容かと思いますが、長く住むことを考えると大切な項目ですね。
「性能表示制度」は任意の制度ですが、利用することで住宅の性能を理解し、安心して購入・生活することができます。
次回は今回同様、必須項目の「温熱環境・エネルギー消費量」に関する内容をご紹介します。